第2回お題SS大会『ハンバーグ』

お題SS 『ハンバーグ』


とある秘密結社のアジトの中、おおよそエージェントには似つかわしくない背丈をした女がモノクルを掛けた女に鼻息荒く話し掛けた。
「ノイア!同士ノイアよ!」

「なんだ同士ブロン、うるさいぞ」

「聞いてくれ同士ノイア、帝国の魔導学院から機密書類を盗み出すことに成功した!」

「なんだと…でそれがどうした」

「どうやらこれは『ハンバアグ』と呼ばれる物を作るための作成書らしいのだ」

「ハンバアグ…聞いたことも無いな」

「私は魔導関係に知恵が回らないから、同士ノイアに頼ろうと思ったわけなのだが…同士ノイアもわからないのか」

「ふぅんなるほど…よし、その書類を見せて見ろ」

「これなのだ」

「これは…随分と滑らかな紙だ、一体どんな材質なんだ…」

「同士ノイア、そこは重要な事じゃないのだ、中身が重要なのだ」

「それはわかっている…ふむ、内容から察するにおそらくこれは新しい魔導生物の錬成書だと思われる」

「なるほど!さすがは同士ノイア」

「だがどんな魔導生物になるのか皆目検討がつかない…」

「それならものは試しで作ってみるのはどうなのだ?何が出来ても私達2人なら問題あるまい」

「ふむ、馬鹿らしいが1番手っ取り早いな」

「馬鹿らしいとはなんなのだ!」

「冗談だ」
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「という訳で、一通り素材を集めた」

「これはなんなのだ?」

「錬成書にはひき肉とあった…つまり素体にカエルの化け物ヒキを使うということだ」

「ふむふむ」

「そしてオニオン」
「錬成にただのオニオンということはないだろう…ということで考えられるモノは希少素材『ジ・オニオン』だ」

「なるほど」

「そしてパン粉…何故略さているのかはわからないがこれはパンドラの塵粉だな」

「こんな貴重なものまでつかうのか…一体どんな魔導生物ができるのだ」

「そして最後に卵、これはドラゴンの卵だな、出し惜しみせずにアークドラゴンの卵を使う」

「おお、これは凄い!」

「そして調味料」

「調味料…え、同士ノイア、調味料?」

「そうだ同士ブロン、調味料だ。ここだけは何処をどう読み解いても調味料だった、塩と胡椒だ」

「な、なんだか一気に不安になってきたのだ…」

「私もだ」
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「まずジ・オニオンを細切りにして火で炙る!」

「同士ノイア!目が痛いのだ!」

「我慢しよう同士ブロン!」
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「次にジ・オニオンとアークドラゴンの卵に塩と胡椒を入れよくかき混ぜる!」

「同士ノイア!ヒキ肉も混ぜるみたいなのだが!」

「どう考えても混ざらない!」

「じゃあどうするのだ!」

「混ぜた物をヒキ肉に詰め込め!」
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「次にトリスメギスオイルでさっきのヒキ肉を炙る!」

「同士ノイア!もの凄い煙なのだが!」

「そしてそのまま周りを囲んでリュミノ水を掛けて蒸す!!」

「同士ノイア!?なんだが目が変なのだぞ!?」

「そのままエリクシールを掛けて終わりだ!!」
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「な、なんだかまずいことしてしまった気がするのだ」

「さて、これで出来上がりのはずだが…ん、なんか光っ」
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レム「先日、突如アイシェの森に出現した魔物、ヒキの変異体と思われる個体についての報告が来ました」

「あぁ、あれ」

「騎士団黒乃隊によると、変異ヒキの討伐後、近くに伸びていた魔導組織色彩のコゥリアの2人を拘束したそうです。」

「ふむ」

「話を聞いた結果、2人はハンバアグなる魔導生物を作っていたと」
「ぶふっ??!」

「どうかしましたか?マスター?」

「い、いや、続けて」

「あ、はい。その後彼らのアジトを調べたところそのハンバアグなる物の錬成書が見つかったそうです」

「そ、そうか」

「そしてマスターに院長から伝言です、『至急、儂の部屋まで来い』とのことですが…」

「わ、わかった…すぐ行くことにするよ」
(一体なんて説明しよう…)

終わり